昭和63年03月10日 集民153.491
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【項目】 議長の当該職員該当性 |
【要旨】 法令上、議長に予算執行に関する権限がない以上、議員の海外視察につき、首長の旅費支出に当たり、議長が出張命令書等に押印する行為は、財務会計上の行為に該当せず、地方自治法242条の2第1項4号の当該職員に該当しない |
【事実関係】 議員の海外視察につき、首長の支出命令に先立ち、議長が出張命令書、支出確認書に押印した |
【関連判例】 (当該職員) 昭和62年04月10日 民集41.3.239 (議員の当該職員該当性) 平成03年11月28日 集民163.611 (土地開発公社理事の違法な行為) 平成03年12月20日 民集45.9.1455 (専決事案での原権限者の当該職員該当性) 平成03年12月20日 民集45.9.1503 (専決職員の当該職員該当性) 平成05年02月16日 民集47.3.1687 (権限委任の場合の首長の当該職員該当性) |
【判決文の抜粋】 地方自治法(以下「法」という。)の規定によると、普通地方公共団体の議会の議長は、予算の執行に関する事務及び現金の出納保管等の会計事務を行う権限を有しないし、普通地方公共団体の長が支出負担行為等予算執行に関する事務の権限を委任する相手方としても予定されていない。現に本件においても、○市財務会計規則、○市事務決裁規則等関係法令上○市議会の議長に対し○市長の有する予算執行に関する事務の権限が委任されていたと見るべき根拠は存しない。 そして、本件の旅費等の支出手続は原審の確定した前記事実関係のとおりであるから、右事実関係のもとにおいては、○市議会の議長が本件旅費等の支出に関し支出命令はもちろん支出負担行為等の財務会計上の行為を行う権限を有していたと解することはできないし、現実にそのような権限を行使したとみることもできない。けだし、本件(一)の旅行のうち海外旅行及び本件(二)の旅行の各支出負担行為は、前記「経費支出原議書類」の決裁(代決)によってされたと解されるし、本件(一)の旅行のうち国内旅行の支出負担行為は、○市財務会計規則…の趣旨によれば、支出命令と同時にされたと解されるからである。原判決は、被上告人B1(注:元議長)が本件(一)の旅行について「出張命令書」に、被上告人B2(注:議長)が本件(二)の旅行について「支出確認書」にそれぞれ押印したことをもって支出負担行為をしたと解しているが、右はいずれも○市議会の議長の事務の統理権(法104条)に基づく行為であって、財務会計上の行為に該当するということはできない。 しかして、法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは、当該訴訟において適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者をいうところ(最高裁昭和55年(行ツ)第157号同62年4月10日第二小法廷判決・民集42巻3号239頁参照)、以上検討したところによれば、○市議会の議長は、本訴において上告人らが違法と主張している公金の支出をする権限を全く有しないのであって、結局、○市議会の議長は、本件においては、法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当しないというべきであるから、前記各訴えは、法によって特に提起することが認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法というほかない。 |