平成02年10月25日 集民161.51

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【項目】

道路法施行法5条1項に基づく使用貸借による権利の住民監査請求の対象性

【要旨】

道路法施行法5条1項に基づく使用貸借による権利は、地方自治法238条1項4号にいう「地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利」に当たらず、結局同法242条の2第1項、242条1項にいう「財産」に含まれない

【事実関係】

市道(敷地は国有地を無償で使用)敷地内を某(道路敷地と某所有地の境界未確定)が不法占拠しているので、不法占拠解除等の措置を求める住民訴訟を提起。原審は、本件道路敷地の使用権は使用借権と解されるところ、地方自治法238条1項4号が例示として掲げている「地上権、地役権、鉱業権」はいずれも用益物権又は用益物権とみなされるものであって、そこに債権は掲げられていないから、同号にいう「その他これらに準ずる権利」とは用益物権又は用益物権的性格を有する権利に限定されるものと解するのが相当であり、使用借権がこれに含まれないことは明らかである、また地方自治法237条1項、240条1項によると、債権については、そのうち金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利のみを同法上の「財産」として取り扱うものとしているのであるから、使用借権のような債権はこの点でも同法上の「財産」ではないなどとして、本件道路敷地の使用権は、住民監査請求及び住民訴訟の対象となる「財産」に当たらないと判断し、訴えを却下

【関連判例】

(財務会計行為等該当性)

昭和51年03月30日 集民117.337 (土地区画整理事業(換地処分)の財務会計行為該当性)

平成02年04月12日 民集44.3.431 (道路建設工事決定)

平成03年11月28日 集民163.611 (土地開発公社の用地買収)

平成10年11月12日 民集52.8.1705 (土地区画整理事業での保留地売却)

平成18年12月01日 民集60.10.3847 (資金前渡)

【判決文の抜粋】

 本件道路敷地を使用する権利は道路法施行法5条1項に基づく使用貸借による権利であり、同項に基づく使用貸借による権利は地方自治法238条1項4号にいう「地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利」に当たらず、結局同法242条の2第1項、242条1項にいう「財産」に含まれないとして、本件訴えを不適法とした原審の認定判断は、正当として是認することができる。