平成02年04月12日 民集44.3.431

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【項目】

道路建設工事施行決定の財産管理行為の該当性

【要旨】

保安林内の市有地に市道を建設するに際し、市建設局長らが請負人をして道路建設工事をさせる旨の工事施行決定書に決裁をしてこれに関与した行為は、道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であって、住民訴訟の対象となる財産管理行為には当たらない

【事実関係】

市道建設担当部局であり、本住民訴訟の被告である建設局長等は、工事施行決定書に押印決裁(決定者は市長職務代理者助役)、そして建設局からの要求に基づき、理財局において工事請負契約に関する入札等の事務手続を行い、工事請負契約決定書に理財局長決裁印を得て、工事請負契約が締結された。工事が施行されたが、工事施行地は保安林指定の解除がなされておらず、工事中止を求める運動などが発生したため工事は一時中止、工事地の原状回復措置として再植栽が行われ、その費用を市が負担した

【関連判例】

(財務会計行為等該当性)

昭和51年03月30日 集民117.337 (土地区画整理事業(換地処分)の財務会計行為該当性)

平成02年10月25日 集民161.51 (財産該当性)

平成03年11月28日 集民163.611 (土地開発公社の用地買収)

平成10年11月12日 民集52.8.1705 (土地区画整理事業での保留地売却)

平成18年12月01日 民集60.10.3847 (資金前渡)

【判決文の抜粋】

 上告人らの行為は、路線が認定され、道路の区域も決定された市道予定地の一部に当たる本件土地を含む土地につき道路状の形状にするため請負人をして道路建設工事を行わせる旨の工事施行決定書に決裁をし、その後、○市長職務代理者と○建設との間に締結された本件契約に基づき、○建設をして本件土地につき道路建設工事を行わせたというものであるから、上告人らの右行為は、市道予定地を道路状の形状にすることにより道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であって、本件土地の森林(保安林)としての財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為には当たらないと解するのが相当である。

 してみれば、上告人らの行為は法242条の2に定める住民訴訟の対象となる行為とはいえないから、被上告人らの本件訴えは不適法というべきである。