昭和38年03月26日 集民65.265

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【項目】

地方自治法243条の2第4項(昭和38年改正前)にいう損害の性質【旧法規定下】

【要旨】

地方自治法243条の2第4項(昭和38年改正前)にいう損害は、当該普通地方公共団体の蒙る損害であって、その全住民に関するものでなければならない

【事実関係】(下記記載参照)

【関連判例】

昭和48年11月27日 集民110.545 (損害要件)

【判決文の抜粋】

 地方自治法243条の2第4項(注:昭和38年改正前)が普通地方公共団体の住民に対し当該普通地方公共団体の役職員による公金、財産等の違法な支出、処分に伴う損害の補填に関する裁判を求め得る権能を与えたのは、普通地方公共団体の公金、財産等は本来住民の納付する租税その他の公課等の収入によって形成され、自治行政の経済的基礎をなすものであるから、当該普通地方公共団体および全住民の利益を擁護し、もって住民の信託に基づく自治行政の公正な運営を確保せんとするためである。従って、普通地方公共団体の住民が同法条に基づき損害補填に関する裁判を求め得るには、その損害が当該地方公共団体の蒙る損害であって、全住民に関するものでなければならない。ところが、記録によれば、上告人主張の○円は、もと○県○郡○村の大字…の7部落が他村の部落と共有していた山林合計○筆に対する持分を○村に信託し、その信託財産の収益から受託者たる村が配分を受けた金銭であって、右信託財産に属するものであるというのであるから、仮りに同村村長が誤ってこれを一般会計に繰り入れたとしても、それによって生ずる損害は、委託者たる前記7部落だけの損害であって、○村の住民全体に関するものでないことは明らかである。従って、その損害については、信託法27条に基づく損失填補の裁判を求め得るのは格別、地方自治法243条の2第4項に基づく損害補填に関する裁判を求めることは許されないといわなければならない。