昭和37年03月07日 民集16.3.445

住民監査請求の要件審査実務において重要な最高裁判所判例集 トップ&目次 ⇒ こちら 

【項目】

地方公共団体の議会の議決と住民訴訟

【要旨】

地方公共団体の議会の議決があった公金の支出についても、住民訴訟によりその禁止、制限等を求めることができる

【事実関係】

昭和29年の警察法改正に伴い議会の議決を経て措置された警察費予算について、新警察法は違憲であるので、その支出を禁ずることを求めて提訴した

【判決文の抜粋】

 地方自治法243条の2(注:昭和38年改正前)による住民の監査請求及び訴訟は、地方公共団体の公金または財産に関する長その他の職員の行為を対象とするものであって、議会の議決の是正を目的とするものでないことは原判示のとおりである。しかしながら、長その他の職員の公金の支出等は、一方において議会の議決に基くことを要するとともに、他面法令の規定に従わなければならないのは勿論であり、議会の議決があったからというて、法令上違法な支出が適法な支出となる理由はない。原判決は、かかる場合には、同法5章に定める議会の解散請求によって解決すべきものと考えるが如くであるが、同法が243条の2を5章とは別に規定した趣旨は、かかる直接請求の方法では足らず、個々の住民に、違法支出等の制限、禁止を求める手段を与え、もって、公金の支出、公財産の管理等を適正たらしめるものと解するのが相当である。かく解するならば、監査委員は、議会の議決があった場合にも、長に対し、その執行につき妥当な措置を要求することができないわけではないし、ことに訴訟においては、議決に基くものでも執行の禁止、制限等を求めることができるものとしなければならない。