平成13年12月13日 民集55.7.1500

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【項目】

 ①地方自治法242条の2第1項4号に基づく訴えとこれにより代位行使されている請求権の行使を怠る事実の違法確認を求める同項3号に基づく訴えとが併合提起されている場合における後者の訴えの適法性

②地方自治法242条の2第1項3号に基づく訴えが怠る事実の不存在により不適法であるとはいえないとされた事例【一部旧法規定下(4号訴訟での妨害排除請求部分)】

【要旨】

①地方自治法242条の2第1項3号に基づく訴えは,これと併合提起されている同項4号に基づく訴えにより代位行使されている請求権の行使を怠る事実の違法確認を求めるものであっても,不適法になるものではない

②第三者が自治体所有の土地に埋設された鉱さい処理施設を所有して土地を権原なく占有しているにもかかわらず,その収去請求をしないことが財産の管理を怠る事実に当たるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づく訴えが提起されている場合において,現に当該土地に処理施設が存在しており,首長がその収去請求をしていないという事実関係の下では,第三者が当該処理施設を所有して当該土地を占有しているか否かにかかわりなく,当該訴えが怠る事実の不存在により不適法であるとはいえない

【事実関係】

六価クロム鉱さい処理の一環として,自治体と排出企業であるB1との協議により,B1社の費用負担で,自治体所有地の地下に六価クロム鉱さいをコンクリート壁等で封じ込めた処理槽(処理施設)を埋設したところ,住民が,自治体は本件土地の所有権に基づく妨害排除請求として本件土地に埋設された本件処理施設の収去請求をすることができるところ,B2(首長)がB1社らに対してこの収去請求権を行使しないことは自治体の財産である本件土地の管理を違法に怠る事実に当たるとして,住民がB2に対して,その違法確認を求める3号訴訟を,B1社等に対して,自治体に代位して,本件処理施設の収去等を求める4号訴訟を提起

【判決文の抜粋】

 …原審は,上告人らの被上告人B2に対する怠る事実の違法確認を求める訴えにつき,被上告人B1らが本件土地を占有しているといえないことを根拠に,怠る事実が不存在であるから訴えを不適法として却下すべきものとしている。

 上記訴えは,地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求(以下「3号請求」という。)であり,(自治体)の住民である上告人らが,(自治体)は本件土地の所有権に基づく妨害排除請求として本件土地に埋設された本件処理施設の収去請求をすることができるところ,被上告人B2が被上告人B1らに対してこの収去請求権を行使しないことは(自治体)の財産である本件土地の管理を違法に怠る事実に当たるとして,被上告人B2に対して,その違法確認を求めるものである。そして,上記訴えは,(自治体)に代位して怠る事実の相手方である被上告人B1らに対して本件処理施設の収去を求める同項4号に基づく請求(以下「4号請求」という。)に係る訴えと併合提起されているものであるが,同項が両請求の間に優先順位を定めていないことや両請求の当事者,効果の相異等にかんがみると,4号請求との関係において3号請求を補充的なものと解する根拠はないから,4号請求がその代位請求の対象となっている当該請求権の行使を怠る事実の違法確認を求める3号請求に係る訴えに併合提起されていることにより,当該3号請求に係る訴えが不適法な訴えとなるものと解すべきではない【要旨①】。この点に関する原審の判断は正当である。

 しかしながら,(自治体)が所有する本件土地に本件処理施設が存在しているにもかかわらず被上告人B2がその収去請求をしていない本件においては,上告人らが財産の管理を怠る事実として主張する本件処理施設につき収去を請求しないという不作為自体は存在しているというべき【要旨②】であり,被上告人B1らが本件処理施設を所有して本件土地を占有しているか否かという点は,上記収去請求権の有無に関する本案の問題というべきであるから,怠る事実が不存在であることを理由に被上告人B2に対する訴えを不適法とした原審の判断は是認することができない。