昭和38年03月12日 民集17.2.318

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【項目】

①住民訴訟の意義【旧法規定下】

②地方税の賦課徴収権の「財産」該当性【旧法規定下】

【要旨】

①住民訴訟の意義

②地方税の賦課徴収権は地方自治法第243条の2第1項(昭和38年改正前)にいう財産にあたらない

【事実関係】

某企業に対し○年度の固定資産税の賦課徴収を行っていないことは旧地方自治法243条の2第1項の「違法な財産の処分」に当たるとして、当該行為の禁止を求めて提訴したもの

【判決文の抜粋】

 地方自治法243条の2第4項(注:昭和38年改正前)所定のいわゆる納税者訴訟は、普通地方公共団体の住民の手によって地方自治運営の腐敗を防止矯正し、その公正を確保するために認められた住民の参政措置の一環をなすものではあるが、普通地方公共団体の事業の管理、出納その他の事務の一般的状況を明らかにすることを目的とする事務監査請求の制度(同法12条2項、75条参照)とは異なり、普通地方公共団体の公金、財産および営造物が、本来、住民の納付する租税その他の公課等の収入によって形成され、自治行政の経済的基礎をなすものであるところから、役職員によるこれが違法な支出、管理、処分行為を防止矯正し、もって公共の利益の擁護に違算なからしめるため、特に、法律によって認められた制度【要旨①】である。かかる納税者訴訟制度の目的に照らせば、その対象となるべき財産とは、住民の負担にかかる公租公課によって形成された地方公共団体の公金および営造物以外の財産を意味し、地方税の賦課徴収権のごときは、これに含まれない【要旨②】ものと解するのが相当である。