平成14年07月18日 集民206.915

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【項目】

談合によって不当につり上げられた場合には自治体に損害が発生するとされた事例

【要旨】

日本下水道事業団が自治体から建設の委託を受けた施設の設備工事を発注した場合において,請負金額が業者らの談合によって不当につり上げられたとすれば,自治体と事業団の委託協定中に,自治体が事業団に費用の一部として支払う施設建設工事の予定価格よりも事業団が発注した工事の総請負金額が低額になったときには事業団が自治体に対しその差額を還付する旨の精算の合意があるなどの事実関係の下では,自治体が事業団の発注工事の請負金額の決定に介入することができないとしても,自治体には談合によってつり上げられた金額相当の損害が発生する

【事実関係】(略)

【判決文の抜粋】

 本件各委託工事の内容は,電気設備工事である本件各工事のみならず,他の工事をも含むものであるが,本件談合により他の工事の請負金額が変動するものではない。そうすると,上告人ら主張のように,本件各工事の請負金額が本件談合により不当につり上げられたものであり,本件談合がなく公正な競争が確保されていたなら,その金額は少なくとも20%は低額になったものであるということを前提とするならば,本件談合という不法行為がなければ,被上告人事業団が支出する請負金額の合計額は,その差額(以下「本件差額」という。)に相当する分について減少し,本件差額相当分が被上告人事業団から(自治体)へ還付されたはずのものというべきである。(自治体)が,被上告人事業団が発注する工事の請負金額の決定に介入することはできず,被上告人事業団の精算報告の内容に諾否を決めることができないことが,上記の点に影響を及ぼすものではない。したがって,本件談合という不法行為によって本件差額が生ずるのであるならば,(自治体)に本件差額相当額の損害が発生するものというべきである。