平成23年10月27日 集民238.105

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【項目】

損失補償契約に基づく金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴えが不適法とされた事例

【要旨】

市が法人の債権者である金融機関等との間で損失補償契約を締結した場合において,市の住民が市長に対し上記契約に基づく上記金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴えは,当該法人が清算手続に移行しており,市が損失補償を約した当該法人の債務が全額弁済されたという事実関係の下においては,不適法である

【事実関係】

市の合併前団体が過半を出資して設立された株式会社に融資した複数の金融機関等との間で,上記融資によって上記金融機関等に生ずべき損失を補償する旨の本件各契約を締結したことにつき,市の住民が,本件各契約は,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条に違反して無効であると主張して,市長に対し,地方自治法242条の2第1項1号等に基づき,本件各契約に基づく上記金融機関等への公金の支出の差止め等を求める事案。なお,上記会社は,原判決言渡し後に清算手続に移行した

【判決文の抜粋】

3 職権による検討

 記録によれば,上記株式会社は原判決言渡し後に清算手続に移行しており,当該手続において,同社の債務のうち市が本件各契約によって損失の補償を約していた部分については,既に上記金融機関等に全額弁済されたことが認められるから,市が将来において本件各契約に基づき上記金融機関等に対し公金を支出することとなる蓋然性は存しない。そうすると,本件においては,地方自治法242条の2第1項1号に基づく差止めの対象となる行為が行われることが相当の確実さをもって予測されるとはいえないことが明らかである。したがって,被上告人が上告人に対し本件各契約に基づく上記金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴えは,不適法というべきである。